9日間の年末年始のうち、何日かは終日読書に充てようとワクワクしている年の瀬のゾリラバです、こんばんは。
今日は早速、一日中クリスティを読んで過ごしました。
そしてついに重い腰を上げて、クリスティ語りを始めようかと。
大好きなものについて冷静かつ客観的に語るのは大変です。
知識が増えるほど、思い入れが深くなるほど、元々興味のない人にシンプルに面白さを伝えることは難しくなるような。
でも語りたいんである‼︎
ファンだから‼︎
ミステリー界の女王にして、推理小説だけでも80冊以上の作品を生み出したアガサ・クリスティなので。
どの作品からどういう順で語るかは少し悩みましたが。
やはり最初は順当に、クリスティの偉大な執筆活動の出発点にして、“灰色の脳細胞”の持ち主エルキュール・ポワロの初登場作品であるデビュー作「スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair of Styles)」から紹介したいと思います。
処女作とは思えないフーダニット(犯人当て)のスリリングな魅力は、これからクリスティを読んでみたいと思う方にもおすすめです!
ポワロ登場
恐らく日本ではシャーロック・ホームズの次くらいに有名だと思われるエルキュール・ポワロ氏。
ベルギーのフランス語圏出身なので、母国語はフランス語です。
Poirotという名前も、フランス語読みですが、日本語表記だとポアロとポワロのどちらも使われていますね。
推理小説の大御所ハヤカ◯ミステリーが「ポアロ」を使っているせいか、ちょっとポアロが優勢かな?
でもゾリラバは、元々のフランス語読みに限りなく近い「ポワロ」が好きなので、そちらを主に使います。
さて、今やミステリーファンなら世界中で誰もが知っているポワロですが。
1920年にこのクリスティの“スタイルズ荘〜”が発売された当時は、もちろん無名。
その後40年以上にわたりファンに望まれて作品に登場させ続ける形になるとは、作者のクリスティも想像だにしなかったせいか。
ポワロさん、デビュー作からして既に初老のイメージです。
スタイルズ荘の女主人
初登場のポワロは、名を馳せたベルギー警察を既に引退し、戦争(第一次世界大戦‼︎)を避けて、ベルギーからイギリスに避難してきたところ。
ポワロと彼の仲間のベルギー人7人を英国に受け入れ、大邸宅スタイルズ荘の敷地に住まわせているのが、この物語の主役?エミリー・イングルソープ夫人でした。
血の繋がらない息子やその家族の面倒も見ている寛大ながらちょっとbossyな大金持ちの夫人が、最近、若い夫を迎え、不穏な空気が流れているスタイルズ荘を舞台に、物語は進みます。
盟友ヘイスティングズ
ほとんどのポワロもので語り手となっている親友のアーサー・ヘイスティングズも、このクリスティの処女作で初登場します。
戦争で負傷し前線を退いたヘイスティングズは、旧知のジョン・カヴェンディッシュ(イングルソープ夫人の義理の息子)に招かれスタイルズ荘にやってきて、以前ベルギーで知り合ったポワロと偶然再会するというわけです。
この後何十年も続くことになるポワロとヘイスティングズの友情は、まさにスタイルズ荘から始まるわけですね。
ヘイスティングズの美点や欠点、ポワロとのやり取りなどの原型が既にここにあり、数十年を経ても変わらないのは本当にすごいと、今回またスタイルズ荘を読み返して(10回目くらい?)感じましたわ。
スタイルズ荘の怪事件
さて、平和で牧歌的なエセックス州の田舎の裕福な一家の財布の紐を握る女主人エミリーが、20才以上年下の夫アルフレッドを迎え入れたことで、不穏な空気が漂うスタイルズ荘。
案の定、ヘイスティングズが招かれてまもなく、エミリー夫人が不審な死を遂げます。
この大金持ちの遺産相続を巡る殺人事件は、クリスティの十八番と言って良いでしょう。
日本のミステリーでも犯人当ての定番ネタですが、その原点はクリスティ。
1920年当時のイギリスの田舎が舞台だと、とても説得力があって味わい深いです。
犯人はいったい誰なのか。
動機がある者は大勢います。
今風に言えば「逆玉」の夫なのか。
血の繋がらない母親に金銭的に依存している息子たちなのか。
エミリー夫人の寛大さによってスタイルズ荘に置いてもらっている者達なのか。
エミリー夫人の遺言状ひとつで人生が変わってしまう者たちばかりですね。
クリスティお得意の二転三転する容疑者に、最後までジェットコースターのようにスリリングに翻弄されること請け合いです。
どの版で読む?
クリスティの文章はとても読みやすいので、英語が苦でなければ原書が断然おすすめです。
ただ英国の地方貴族の暮らし特有の語彙や言い回しが結構出てくるので、知らない単語にぶつかったら辞書を引かないと気が済まない人には大変かも。
クリスティを読んでいるうちに、だんだん慣れておなじみになってくるのですが。
翻訳版だと、矢沢聖子氏が訳したハヤカワ版と、能島武文氏が訳したグーテンベルク版が入手しやすいでしょうか。
どちらも2003年版ですが、読んだ印象はだいぶ違うかなー。
矢沢訳は、訳文が現代的で簡潔で読みやすく、スラスラ頭に入ってくるので、謎解きに集中したい人にはおすすめです。
能島訳は、ちょっと古風な訳文なので、1920年の英国の雰囲気を味わうには良いかも。
終盤で興奮したポワロやヘイスティングズが「◯◯ですぜ」とかいう馬丁みたいな言葉遣いをすることに違和感を感じるかもですが(ゾリラバしらべ)
スタイルズ荘の怪事件
- 原題:The Mysterious Affair of Styles
- 発表:1920年
- アガサ・クリスティの最初の長編作